3人が本棚に入れています
本棚に追加
とある日のことだった。
コンビニのバイトからの帰り道、俺はジュエリーショップのショーウィンドウの前で足を止める。
キラキラと光る指輪を見つめてため息をつく。優花にこういうのをあげてプロポーズすることが出来ればかっこいいのに……そうは思うが俺では到底手の届かない値段に打ちひしがれる。
だが悲観することはない、優花は優しい女なので指輪や結婚式なんてなくとも俺と一緒にいてくれるだろう。本当に俺はいい彼女と巡りあったな。
歩き出し、デートのことを考える。給料が入ったので優花とどこかに行きたい……まぁあまり金はかけられないが。
彼女の希望を聞く為にメッセージアプリを起動させて“デート、どこか希望あるかな?”と短い文章を送る。しかし、一向に返信はなく既読すらつかない。予想していたことではあるが少々悲しい。
メッセージも返せない程忙しい仕事なら辞めてしまえばいいのに、そう思いつつ2回目のため息をついた時だった──目の前を優花が横切ったのは。
突然のことに呆けてしまったが久しぶりに出会った愛しの彼女に気持ちが昂る。
追いかけて声をかけようとしたのだが──何かが……おかしい。
優花は3歳位の“女の子”と手を繋いでいるのだが、“妹”にしては歳が離れ過ぎていると思う。
それに、女の子は優花と繋いでない方の手を“男”と繋いでいる。男は優花と同年代位に見えるが……。
その3人は“兄妹”にしては不自然で、“親子”としては違和感なんてなかった。
心臓がドクドクと嫌な音をたて、冷たい汗が背中を流れる。そんな俺の前で女の子は無邪気に言った。
「パパ、ママ! 今日はレストランでご飯たべよう!」
騙された! その衝撃的事実に俺はその場へ立ち尽くすことしか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!