酷い女

　フラフラとおぼつかない足どりでアパートへと戻る。
　真っ暗な部屋の中、電気もつけずに万年床に倒れ込む。
　頭の中には嫌でも先程の３人の姿が思い浮かぶ。誰から見ても幸せそうな親子、かわいい娘に仲の良い夫婦……。
　鼻の奥がツンッと痛くなり、目頭が熱い。俺は枕に顔を押しつけると出来るだけ声を殺して泣いた。
　ああ、所詮俺は優花の浮気相手だったというわけか。俺は本気で優花が好きで、将来は結婚をと考えていたのに……優花にとって俺は遊びだったんだな。そんな酷いことってあるかよっ！！

　泣いて、泣いて泣いて泣いて。その内に悲しみが苛立ちに変わってくる。
　あの女、自分の欲求不満を解消する為に俺を騙しやがったのか。既婚の子持ちのやることじゃねーだろ。
　くそっ、俺のことを簡単に騙されるヤツだと思って馬鹿にしてやがったな。
　あー、くそくそくそっ！！　騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された騙された憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎悪憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎──！！

　次の日、俺はホームセンターへ包丁を買いに行った。