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「あのさぁ〜、聡ちゃん。そんなんじゃ何時まで経っても私に勝てないよ?」
僕が汗をダラダラ垂らしてパレットに荷物を乗せていると、不意に仕事を終わらせた、杉木 唯子に声を掛けられた。
「なんだよ?!杉木さん。余計なお世話だよ!!」
僕は自分の首に掛けたタオルで、額に吹き出る汗を拭いながら、杉木 唯子を睨みつけた。
「そんな怖い顔をしないの!……聡ちゃんにだけ、重い荷物の運び方を教えてあげる。私が、やって見せるから、よく見ててね?」
すると、杉木 唯子は僕の担当の荷物を軽々と持ち上げパレットに乗せた。
「どう?わかった?聡ちゃん」
僕は、杉木 唯子のあまりの素早さ故に、まるで分からずにいたので首を横に振った。
「しょうがないなぁ〜」
杉木 唯子は徐に僕の背中に回り込むと、後ろから僕の両手を手に取り、重い荷物を運ぶコツを教えてくれた。
という僕は……。
あ、杉木さんの胸が僕の背中に当たっている!!……と、胸をドキドキさせていたから、教わるどころではない。
「す、杉木さん……ゴメン……もう一回、教えてくれないかな?」
僕は胸の鼓動を必死に抑えながら、杉木 唯子に、そう頼んだ。
「うん、いいよ?」
そして、また、杉木 唯子は僕の両手を取りコツを教えてくれた。
高鳴る鼓動を抑えながら僕は、作業のコツを掴む為に、杉木 唯子の指導に集中した。
「あ!本当だ!!これだと楽!!!」
「でしょ?……じゃあ、聡ちゃん。私と荷物運びの競走をするよ?」
「え?競走?」
「はい!よーいドン!!!!」
すると、杉木 唯子は僕の担当のパレットに荷物を乗せだした。
「あ!待って!!!!」
「待たないよぉ〜、聡ちゃん」
杉木 唯子は舌をペロンと出してニッコリと笑った。
その笑顔に僕は胸がキュンとした。
なんだ?この感覚は?
僕は、そう思いながら、杉木 唯子に負けまいと競走に参戦したのだった。
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