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「あ〜、負けたぁ!!流石、男の子ね?……で、聡ちゃんって幾つなの?」
僕は、杉木 唯子に荷物乗せ競走に勝った優越感に浸りながら、
「僕、25だよ」
と応えた。
すると、杉木 唯子はヒューと口を鳴らし、
「25かぁ〜、私より10歳も下なんだ。そりゃ敵わないよねぇ〜」
と、ニッコリと微笑んだ。
その微笑みに僕は何故かドギマギしながら、
「杉木さんって、35なの?……もっと若いと思ってた……」
と、僕は自分の胸に手を当て、高鳴る鼓動を必死に抑えようとしながら小さく呟いた。
「あら、嬉しい♡そんなに若く見える?……ねぇ、聡ちゃん。私の事は杉木さんじゃなくて、唯ちゃんって呼んでくれない?……なんか杉木さんって呼ばれると、こそばゆくてさ」
杉木 唯子は、そう言うと頬を赤らめながらポリポリと手で頭をかき、僕にそう頼んできた。
その仕草が僕には可愛く感じられて、また、胸が高鳴る。
落ち着け、落ち着け!!
僕は心の中でそう自分に言い聞かせながら、
「じゃ……ゆ……唯ちゃん……」
と、顔から火が出そうな程、僕は高揚しながら、杉木 唯子に向かってそう呼んだ。
「嬉しいわぁ〜!!……じゃ、聡ちゃん。次はリフトの運転の練習ね?」
と、杉木 唯子は僕の手を徐に掴んでリフト置き場まで引っ張って行く。
その、杉木 唯子の手の温もりが……僕にはとても優しく温かく……気持ちが穏やかになっていくのを感じた。
だから僕は、もっと、杉木 唯子の手の温もりを感じたくなり思わず、杉木 唯子の手を強く握り返した。
すると、
「?……どうしたの?聡ちゃん?」
杉木 唯子はキョトンとしながら僕の顔を覗き込んだ。
嗚呼……杉木 唯子の顔が近くにある……キスしたい……。
そんな衝動が僕に襲ってきた途端、僕はかぶりを降った。
いかん、いかん!!杉木 唯子は僕のライバルなんだ!!
また僕は自分に、そう言い聞かせると、
「な……何でもないよ?」
と言って強く握りしめた自分の手を緩め、杉木 唯子に、そう言った。
「そう?じゃあ行くわよ?」
杉木 唯子は何事もなかったように、僕の手を握りながらリフト置き場まで僕と一緒に歩いて行った。
その間、僕は……杉木 唯子はライバル、杉木 唯子はライバル……と呪文をかけるように心の中で呟きながら、杉木 唯子について歩いていた。
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