【ライバル】

5/13
前へ
/13ページ
次へ
僕と、杉木 唯子がリフト置き場に到着すると僕たちは、それぞれにリフトに乗り、山積みになっているパレット置き場までリフトを走らせた。 「いい?聡ちゃん。今から、このぐちゃぐちゃになっているパレットを整理するわよ?」 「う、うん……」 「じゃ、また、お手本を見せるから、よく見ててね?」 「うん」 すると杉木 唯子は迅速、且つ、正確にパレットをリフトの爪で差し込み綺麗にパレットを積み上げて行く。 それは、1mmの狂いもない真っ直ぐのようなビルのようにパレットが積み上がっている。 「どう?聡ちゃんも、やってみる?」 「う、うん……」 僕はリフトを動かし、パレットに爪を差し込みパレットを積み上げていった。 けれど、僕が積み上げたパレットは、あちらこちらはみ出していて、杉木 唯子みたいに綺麗にパレットが積み上げられない。 僕は悔しくて、思わず泣いてしまった。 「聡ちゃん?……泣かないで?」 杉木 唯子は、そう言うと自分が乗っていたリフトから降りて僕に近づくと、自分のタオルで僕の涙を拭いてくれた。 「あ、ありがとう……杉木……ううん……唯ちゃん……」 僕はバツが悪くなり、杉木 唯子に心の中で謝りながら、そうお礼を言った。 「いいのよ?はじめは誰だって上手くいかないもんだから。少しずつ練習しようね?」 と、杉木 唯子は僕の頭を撫でてくれた。 その瞬間、僕は瞬間湯沸かし器のようにリフトから飛び降り、杉木 唯子の華奢な身体をギュッと抱きしめていた。 杉木 唯子はライバル……という呪文は、もう僕を制御不能にさせていた。 杉木 唯子が好きだ!! 僕は、はじめて、そう認識しざえるしかなかった。 「おやおや……聡ちゃん、そんなに悔しかったの?」 杉木 唯子は僕に抱きしめられながら、ポンポンと、まるで子供をあやすように僕の背中を叩いてくる。 「ち、違うよ!!……僕は……僕は、唯ちゃんが好きなんだ!!」 僕は力の限り、杉木 唯子をギュッと抱きしめ、そう、叫んだ。 「へ?……な、何?……急に……」 杉木 唯子は僕の腕からスルリと身をかわすと、照れくさそうに頬を赤らめながらモジモジとしだした。 「僕は本気だよ?……生まれてはじめて女の人を好きになったんだ。だから……僕と付き合ってください!!」 僕は、杉木 唯子の……ううん、唯ちゃんの仕草が愛おしくなり、そう告白した。 すると唯ちゃんは……。 今度は淋し気に俯いて、ジッと考え込んでしまった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加