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僕は以前とは違い、会社へ行く足取りが軽くなっていた。
僕の住むアパートは会社の近くにある。
今は冬で道端には花の一つも咲いていなかったけど、僕にはお花畑が見え、踊りだしたくなる気分になっていた。
唯ちゃんは自転車で通勤している。
僕は会社に到着すると真っ先に自転車置き場へ向かい、唯ちゃんの到着を待つようになっていた。
「お!聡ちゃん、今日も元気そうね?おはよう!!」
唯ちゃんは寒さで真っ赤になっている鼻を手で温めると、そう僕に笑顔で挨拶をしながら自転車置き場に自分の自転車を置いた。
「唯ちゃん!!おはよう!!翔吾(しょうご)くんは今日も元気に学校へ行ってる?……インフルエンザが流行っているから気を付けないとね?」
「うん、今のところ大丈夫だよ?ちゃんと学校に行ったよ?」
翔吾くんというのは唯ちゃんの子供の名前。
小学一年生でワンパクな男の子だと唯ちゃんが僕に話してくれた。
「そっか!!それは良かった!!」
「うん!!……それじゃ、聡ちゃん!!今日もリフトの練習をしよう!!」
「はい!!唯ちゃん師匠!!」
僕が敬礼のポーズをとって見せると、唯ちゃんは、
「バーカ、バーカ」
とケラケラと笑い転げていた。
唯ちゃんを楽しい気持ちにさせる事。
それが僕の役目だと、笑い転げている唯ちゃんを見つめながら僕もクスクスと笑った。
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