第5章 君は淫らな僕たちの器

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「あ。…っ、はぁ。あ…」 「やっぱり。あまりに急激に強い刺激を受け続けすぎて、おかしくなってる。心構えも下準備もなく人前で性的な刺激を与えられ続けたら。元に戻るのは容易じゃないわ。…しかも、正式な儀式の決まりに則ってのやり方だから仕方ないとはいえ、寸止めで途中までであとはお預けだし。…ここまでするならもう、開き直って最後まで思う存分深くまで満たしてあげた方が。いっそ楽なのに」 独り言のように呟きながら、繊細な指遣いでそこをなぞり、広げて柔らかく揉みほぐす。まるでプロの施すマッサージみたいだ。違うのは彼女がケアしてるのが性的な器官で、それによって鎮まるどころか。むしろ抑えようもなくわたしの性感が目覚め、昂っていくこと。 「あっ、うぅん。…もぉ。濡れちゃうぅ…」 「いいの、それで。…恥ずかしく思う必要なんてないの。こうされれば誰だって、気持ちよくなって反応する。あなただけじゃないわ。人間の身体はそういう風にできてる、それだけよ。…可哀想に。初めては十八になってから、それまでは性感帯を刺激して受け入れ態勢を整えるだけって決まりだから。中は最後まで大きいので満たしてもらえなかったのね」 それって可哀想なのか。とにかく処女だけは喪失せずに済んだ、とも言えるけど。…わたしはじわりと自分の入り口が再び蕩けて物欲しげに拡がるのを感じて、呻いた。 でも、確かに。どうせあそこまで完膚なくやられて、心も折られて容赦なく身体も屈服させられるんなら。中途半端じゃなくいっそ奥まで突っ込まれてがんがん貫通していた方が。…結果的に楽だったかも。 「激しく何度もいきはしたけど浅いから。本当の深い満足は得られなかったと思う。それが消化不良で燻ってて、届かないもどかしいところにずっとしこりみたいに残ってるのよ。…これだと日常生活に戻っても変な感じにしばらく引きずっちゃうから。出来るだけ解しておくね、嫌じゃなければだけど」 「あ、はぁ…んっ」 わたしは咄嗟に言葉が出ず、つい甘い声で応えてしまった。しどけなく開いた脚を閉じることも出来なくて、されるがままに彼女の愛撫にただ身を任せている。やっとのことで短い懇願を絞り出した。 「おねがい。…しま、す」 「うん。…だいじょぶ。柚季さんが嫌だと思うようなことはなるべく。しないし」 そう呟いてわたしの脚を付け根から大きく広げさせ、そこに自分の顔を近づけた。…照明が明るいし、めちゃくちゃ恥ずかしい。でも、嫌じゃない。 「優しく、するから。ね?」 「あぁっ、はぁんっ」 熱い滑らかな舌がざらり、とそこを覆った。…あ、ぁ。いい…。 わたしは恍惚となって潤んだ目を思わず見張った。 今の今まで。本人の口から言葉で説明されても、村で性の手解きを一手に引き受けてる。なんて、こんな端然とした品のある日本人形みたいな女性が。いくら何でもそんなの無理でしょ、と信じられない気持ちの方が勝っていた。 だけど。わたしのことがどうしてこんなに深くわかるの、こうして身体を触れ合うのは初めてなのに。と驚愕するくらい的確にその舌も指も。ピンポイントでして欲しいところをちょうどいい塩梅で突いてくる。 今まさに。そこをそうして欲しかった、とうっとり蕩けながら身体の力を抜いて彼女に全てを委ねる。こんなの、間違いなく。…その辺の普通の深層のご令嬢がいきなり習得できるようなスキルじゃない。 この人、多分年齢にそぐわないレベルの百戦錬磨のプロだ。若くしてここまで女性の身体に熟達するのに。どんな体験を経て育ってきたのか。…正直あまりリアルに想像を馳せたくはない、けど。 「はぁっ、あぁん…っ」 どうしようもなく乱れながら、夢中で彼女の頭にしがみつこうとする。水底さんは軽く首を振って顔を上げたので、わたしにくっつかれたくないのかな。と一瞬寂しく感じたが、それは単なる思い違いですぐに彼女は一旦起こした上体から身に纏っていた薄物(後で気がついたが、さっき双子や観衆の村の若者たちが揃って羽織っていた柔らかい素材のごく薄い白シャツと同じもの)を滑り落とし、裸の身体でわたしの上に覆い被さりぎゅっと両腕で全身を抱きしめてくれた。 「可哀想に。こんな風に無理やり高まらせておいて、そのまま放置なんて…。わたしがちゃんと最後まで、しっかりケアしてあげる」 唇に軽く試すようにそっとキスしてきた。思わずねだるように口を開いて求める。彼女はこっちの意図を察して、柔らかく舌を入れてきた。 しばし黙ってお互いを味わう。 ほんの今朝方まで。こんな風に女性と唇を重ねることがわたしの人生の中であり得るなんて。本当に、想像すらしたことなかったな。 我ながらまるっきりレズっけのかけらも感じたことがない。女の子に触れてみたい、触られたいと思ったことすらなかったのに。 唇を開いてお互いの舌を絡ませ合いながら、きめ細やかで滑らかな素肌が自分の身体にぴったり吸いつくように重なって弾むのを直に感じていると。
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