最後の過ごし方

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
ワタシと先輩は自然の中をはしゃいでまわった。 空も土も風も何もかもが新鮮で楽しかった。 そのうちに先輩は「なんだかダルい」と言って草の上に横になる。 「本物の草って柔らかいね」 「人工芝みたいにツンツンしてないですね」 先輩は目をつむっている。 ワタシはその隣に座り込んだ。だるくて立っていられない。 「小さい頃からの夢だったんだ。自然の中で過ごすこと。最後に体験できてよかった。付き合ってくれてありがとう」 「何言っているんですか。彼女として当然です」 「そうだね。恋人だもんね。本当に楽しかった」 そして沈黙が流れる。 なんの音もしない。耳に痛い静寂。 「最後にワタシもいいですか」 先輩の返事を待たずにワタシは触れるだけのキスをした。 先輩の唇は温かくて柔らかかった。 「天気がいいって、こういう日を言うんでしょうね。最後に楽しい時間をあり がとう」 言ってワタシも先輩の横に寝転んだ。 空はどこまでも青かった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!