⑤13番目の呪われ姫は永久就職を希望します。

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 ベロニカはなんだか寝付けなくて部屋の小窓から星を見上げ、微笑む。 「ふふ、まさかお泊まりする事になるなんて思いませんでした」  そうつぶやいたベロニカは幸せそうに今日の出来事を思い出す。  とても賑やかな夕食だった。伯爵が作ってくれたごはんはとても美味しかったし、伯爵の母もとても優しかった。  彼の性格はきっと伯爵のお母様に似たのねとベロニカは微笑む。2人の雰囲気がとても似ていて心地よかった。 「ニャー」  ベロニカは鳴き声に反応し、暗闇を見つめる。そこには金の目をした真っ黒な猫がお行儀よく座っていた。 「あらあら、私が呼んでいないのに勝手に出てきてはいけませんよ」  ベロニカは自身の魔力から生まれる使い魔の猫に手を伸ばすと、嬉しそうにニャーと鳴いてベロニカに擦り寄り、ベロニカの手の上に一冊のノートを置いて消えた。 「まぁ、また勝手に持ってきちゃって。王宮ではないのだから、持ってきちゃダメなのに」  どうやって伯爵に返そうと考えながら、何気なくノートをめくってしまったベロニカは書かれている内容に驚いて部屋を出た。  コンコンっとノックをするとすぐに伯爵が顔を出す。 「伯爵、コレって……」  ばっとベロニカは手に持っていたノートを伯爵に見せる。 「……何であなたがコレを持ってるんですか?」 「ご、ごめんなさい。勝手に見てしまって。たまたま、偶然、拾って……なんて信じないですよね」 「部屋に入ったんです?」  隣の部屋を指差しながらじっと見つめてくる伯爵にたじろぎつつ、使い魔が勝手に持ってきたなんて言えないベロニカは他に言い訳が思いつかず謝罪とともに頷く。 「勝手に、ごめんなさい」   「いや、鍵かけてなかった俺の落ち度なんで」  伯爵はいつも通りの仏頂面で淡々とそう言う。怒ってはないらしいと胸を撫で下ろしたベロニカは改めて伯爵に尋ねる。 「何で、呪いについて……こんなに、いっぱい……こんなことしたって、伯爵には何のメリットも」  そのノートに書かれていたのは、ベロニカの呪いの規則性と考察、そして解呪のための仮説が沢山の書き込まれていた。 『呪いが解ければ、彼女は自由に生きられるだろうか?』  伯爵の几帳面な文字をなぞり、ベロニカは泣きそうになる。 「何で? ただでさえ忙しいのに。こんな、呪いについて調べなくっても私を殺してしまえば終わるでしょ?」  これではまるで、とベロニカは思う。 「あーもう。だから、確実な事言えるまで黙っておこうと思ってたのに」  まるで、生きていてもいいと言われているみたいだ。  そうベロニカが思ったのと同時に、 「そんなの、ベロニカ様に生きてて欲しいからに決まってるでしょうが」  と、伯爵の声が落ちてきた。
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