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愛の定義
彼女は好きという2文字の好意を伝えてくれない。
きっと愛が薄くなってしまったのだろう。
「もうそろそろ。別れの時期か。」
黄昏時にベンチに腰を掛ける僕。
「お隣いいかね?」
顔ははっきりと見えなかったが、一声で分かった。
優しそうなお婆さんだと。
「さてあなた、愛の悩みを抱えているのでしょう?」
「え、どうしてわかったのですか。。」
お婆さんは僕の驚いた顔を見て静かに笑った。
「何年生きてるの思ってるの、もやもやがあなたを包んでいるわ。」
「実は彼女が気持ちを。愛を。伝えてくれないのです。」
「あなた、愛が何か知らないわね。きっとあなたの彼女さんはあなたよりずっとずっと大人よ。」
「本当に愛を伝えていないと思う?」
「だって。好きだと言ってくれ…‥」
「全て言葉だと思っているの?」
怒りを持った声で僕は問い質された。
「貴方の言うとおり、勿論言葉も大事よ。でもね、愛の伝え方は言葉だけじゃないわ。よく聞いて。愛っていうのは"その人に対してどれだけ全力でいられるか"」
「人それぞれ愛は違くて、時間や言葉、困った時に助けてくれる、そばにいる、他にも沢山あるわ。」
「単に好きという都合のいい言葉がほしいだけなら別れなさい。彼女さんが可哀想だ。」
"もう一度聞くわ。"
「本当に愛を伝えていないと思う?」
いつもなら景色をじっくり見ながら歩く海沿いの道を、彼女の待つ家だけを視界に入れ走った。
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