あの日のリボンはここにない

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 ——クマちゃんちょうだい!    先週、遊びに来ていた君の従姉妹のゆうちゃんがそう駄々を捏ねて泣いた時、君は困ったように微笑んだ。    ——もう春には高校生になるんだから、いいでしょう。ゆうちゃんに譲ってあげれば。    君のお母さんが取り成すと、君は「そうだね。そろそろだよね」と言って、ゆうちゃんを抱き上げた。    昔、クマはお家に置いてお外に遊びに行くよと言われても「いっしょにいくの。ばらばらはイヤ」と駄々を捏ねていた君が、すっかり大人のお兄さんみたいな顔をして、穏やかに年下の子をあやしている。  そんな君の成長がとても眩しくて、微笑む顔の優しさに堪えようもなく好きな気持ちが溢れてしまう——。    ああ、そうだ。  僕は、君が好き。  可愛かった君が、どんどんかっこよくなっていくことに僕は戸惑いつつも、けれど、なす術もなく惹かれていく。    なのに僕と君は、どうしようもない程にとっても近くてとっても遠い。これから先、同じ歩調で歩めない。  君は、どんどん大人になっていく。
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