あの日のリボンはここにない

1/4
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
   暗い部屋の中、ふと目覚めた僕は、闇に慣れてきた目で君の顔を見た。  長い睫毛を伏せて静かに寝息をたてている君は、まだ頰の線に少しだけ幼さを残している。        柔らかさの薄れつつあるその曲線を目で辿りながら、僕は昔に想いを馳せる。  出会いは君が三つの時で、それから僕らはずっと一緒。  まるで兄弟みたいに側で過ごして、君の楽しい顔も、悲しい顔もたくさん見てきた。  やがて背が伸びて、声が少し低くなって、皆んなの前では泣かなくなった君も、僕の前だけでは、こっそり泣き顔を見せてくれたりもした。  僕はいつの間にか、そんなことに少しだけ、自分が特別だって気持ちを持ってしまっていたんだ。  
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!