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第4話 中継
葬儀を終えた死者の言葉を聞く術……死口。
蓮は、回向にその術が使えるかと訊ねた。
蓮の真意を探るような回向の目線を、蓮は、逆に捕らえるようにも真っ直ぐに受け止める。
少し間が開くと、蓮はふっと笑みを漏らして答えた。
「信じる事が出来ないなら、こんな話……お前に頼む訳ねえだろ」
蓮の言葉に、回向は笑みと共に言葉を返す。
「ふうん……? 死口は知っての通り、死口を行う者自身の体を使って行うものだ。つまりは、己自身が憑座となり、死者の言葉を伝える。だが、目にする姿は死者とは当然、異なるものだ。死口を行う者の姿な訳だからな。この境界の難しいところが、死口の真偽だ。神宿りや神降ろしと違ってな、何を宿しているのか、本当に降ろしているかの判断は、見ている者には難しい。何を口にしても、死者の言葉だと信じさせるものがあれば、死口と称して欺く事も出来るという訳だ。本当に死者の言葉だと、知る事が出来るのは、死口を行った者だけだからな」
「ふん……何をどう話そうが、それが死者の言葉だと?」
「ああ、そうだ。どう口を開こうが、死者の言葉だと言い張る事も出来る。この意味……分かるだろ……?」
意味を含めた回向の目線に、蓮は答える。
「は。死人に口無し……ね。成程」
蓮の言葉に回向は、クスリと笑みを漏らした。
「さあ……どうする、紫条」
回向は、詰め寄るように、蓮に返答を求める。
「それは……死口が出来ると答えている……と受けていいか」
蓮の言葉に。
「そんな曖昧な答えがあるか。俺が出来るか出来ないか、先ずはお前が判断しろよ」
蓮を斜めに見ながら、試すかのようにニヤリと笑う。
「真偽の境界を、はっきりしろと?」
「信じるも信じないも、お前次第だろ」
「だから言っているだろーが……回向」
蓮は、ニヤリと笑みを見せると、言葉を続けた。
「お前じゃなければ、頼まねえ。それとも……俺のこの言葉自体に、真偽が問われるか?」
回向へと、強く向ける蓮の目線。
「ふん……紫条、お前には本当に参るな」
回向は、そっと目を伏せると、静かに笑った。
そして、目線を真っ直ぐに蓮に向けると、真顔で答える。
「頼まれてやるが……」
返された言葉に、蓮は満足そうだった。
「それで……誰の死口を行うんだよ?」
「前聖王」
「前聖王だと……? 何故、今更…… 何の為にだよ?」
回向は、眉を顰め、怪訝な表情を見せる。
「今更? 今だから、だろ」
「紫条……お前……」
「前聖王の魂自体には、深い執着はなかった……そうだよな? 羽矢」
「ああ。回向……お前だって、それは分かっていたんじゃないのか?」
「……まあな」
気が重くなったのか、深い溜息をつく回向に、蓮が言う。
「お前……前聖王の魂に触れているよな?」
「ああ……あの霊山でな」
「対話するつもりだったんだろ。……来生の魂も含めてな。高宮の覚悟が決まったのも、その辺りからじゃないのか」
「はっきり言えばいいだろう。何が言いたいんだ?」
回向は、話の先を促す。
「国主という位も、己の体にも執着はない……つまりは」
蓮の目が強く回向を見た。
その蓮の目に、蓮が何を考えているかを気づいたように、回向の目がピクリと動く。
蓮は、回向の反応を確認すると、こう言葉を続けた。
「次期国主誕生までの中継だったと、考えるべきだろう?」
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