プロローグ  倶会一処

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プロローグ  倶会一処

「なんで俺が、お前に呼びつけられなければならねえんだよ?」  蓮の声が、不機嫌に流れた。 「おーい、蓮。『聖王(じょうおう)様』に失礼だぞー」 「そう言っている割には、気持ちが籠ってねえんだよ。お前だって同じだろうが。馬鹿羽矢」  蓮の苛立ちが羽矢さんに向く。  羽矢さんは、笑みを見せているが、苛立ちを吐き出すようについた蓮の溜息に、ピクリと表情が僅かに歪む。 「……おい、蓮……」  羽矢さんの声が少し低くなった。  僕は、ハラハラしながらも、その場を見守る。 「俺だって暇じゃねえんだよっ! 毎日毎日、読経だ誦経だをやってんだぞ? おまけにジジイの説法付きなんだよっ! 漏れる事なくだっ! 大体、呼ばれたのは蓮、お前だけで、俺はお前について来て欲しいと頼まれたから来たんじゃねえかっ! そもそも……」  羽矢さんの目線が前方に動く。 「なんで呼びつけてんのがお前なんだよっ! 側近ならいくらでもいるだろーがっ! 結局は前聖王の意向通りに、陰陽師の排除までとは言わないが、その役職を廃したのはお前だろーがっ! それともなにか? ようやく辿り着いた処に、不満でもあるとか言うんじゃねえだろうなっ?」  羽矢さんはそう言うと、目線を向けた方へと指を差した。 「指を差すな。お前の方が失礼じゃねえか、羽矢」  蓮は、羽矢さんの手を掴んで下ろした。 「それ、本気で思ってねえだろ、蓮。本音が吐き出せるよう、門、開いてやろうか?」 「ふざけるな。低レベルな余興をやるつもりはねえ」  蓮と羽矢さんのやりとりを見ながら、クスクスと笑う『聖王』……高宮 右京。 「相変わらず……ですね。嘘がない。だからこそ、あなた方でなければ……と、思いまして」  ゆっくりと瞬きをすると、笑みを止める。 「総代や奎迦(けいか)住職のお力も頂き、前聖王の弔いも無事に終えましたが……」  そして、続けられた高宮の言葉に、蓮と羽矢さんの表情も真顔に変わった。 「その墓が……掘り起こされました」
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