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初めの強引な様子からは考えられないほどの丁寧な手つきで後ろを準備していく龍牙は、自身でもわずかに驚いていた。
(初めてとか、めんどくせーから普段ならぜってぇ相手にしねぇのに、雪兎相手だと気になんねぇ。むしろじっくり開発できる楽しみみたいな気持ちまで湧いてくる)
大学の食堂で会った時から、自身がこんな強引にことに及ぼうとするとは思っていなかった。
自分の顔が良いことも、家柄のこともあって、勝手に人が寄ってくるので相手に困ったことはなかった。
(それを、すげぇいい匂いがするからって言って、Ωを自分の家に引きずり込むとは……)
考えている間も手は止めず、雪兎の後ろをまさぐっていく。
時折漏れ聞こえる声にも、上から見下ろし、わずかに見える赤くなった耳からも、興奮を掻き立てられる。
今まで相手にしてきた者たちは、皆慣れた様子でしなだれかかり、声をあげ、すぐに事に及んでいた。
それが雪兎は、初めてだと言う言葉通り、戸惑い、恥じらいつつも我慢できない声を漏らす。
(匂いだけじゃなく、こんな新鮮な反応だからか、すげぇ、そそる)
自身のものが昂ってきていることを自覚しながらも、ゆっくりと準備を進めていく。
「そろそろいいか」
「んぁっ」
言葉とともに指を抜くと、それに合わせて雪兎から艶めかしいと感じられる声が上がる。
それに伴い雪兎の顔も自然とあがり、とろりと蕩けてきている表情が見える。シャワーで泡を流すと、先に雪兎を脱衣室へ送り出し、体を拭いておくようにタオルの場所を伝える。
自身を手早く洗い終えると脱衣室へ出る。
そこにいた雪兎は、ぼんやりとした表情でのろのろとまだタオルで体を拭いていた。
龍牙は自分は適当に拭き、バスローブを羽織ると、雪兎からタオルを取り上げ、バスローブを着させると、髪を丁寧に拭き上げ、ドライヤーで乾かしていく。
その間も雪兎の顔はとろりとし、動きは鈍い。
「のぼせたか?」
「ううん。……なんか、龍牙の匂いが濃くて、よくわかんない」
「αの匂いに当てられてんのか」
「そう…なの?でも、ふわふわして、なんかいい気持ち」
鏡越しに会話をしていると、ふふっと笑みをこぼし返事をする雪兎が見える。
(平凡っつてたけど、十分可愛くねぇか?……俺が見つけたって考えると、悪くねぇな)
龍牙はゴクリと無意識に唾を飲み込みながら髪を乾かし続ける。
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