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【5】ナツ、シズカと暮らす
神様との1日限りの同居、2日目。
夏を司る、健康的で明るく活発な、ナツだ。
朝、うっすらとした意識の中で、シズカは思った。
(なんだか……暑い……)
部屋の空気が、いつもより蒸し暑い気がする。
そう思いながら目を開けた瞬間に、目の前に見えたモノ。
太陽のように眩しい、彼の笑顔だ。
「おはよう、シズカ」
「え、え!?きゃぁぁああ〜〜!!」
シズカは驚きのあまり、一気に飛び起きた。
「ナツ様!?なんで隣で寝てるんですかぁ!?」
「添い寝。オレたちの仲じゃん、敬語やめようぜっ!」
答えになっていない。添い寝なのは見れば分かる。
そして、どんな仲なのか疑問が増えた。
「そ、そんな、いきなり…あ、あれっ……」
寝起きでいきなり上半身で起き上がったせいで、頭がフラフラする。
そのままシズカは倒れて、再び枕の上に頭を置いた。
「無理すんなよ、オレが朝食用意するから待ってな!」
そう言ってナツは起き上がると、シズカを寝かせたまま寝室を出た。
あ、優しいかも……。本当の同棲とは、こういう感じなのだろうか?
それにしても、昨日のハルもだが、神様は料理が得意なのだろうか。
リビングに行くと、テーブルに置かれていたのは料理ではなく……
「オレ、料理できねぇから、果物でごめんな!」
お皿に乗せられた、バナナやスイカ。夏の果物だ。
「ありがとう。大丈夫、家にパンもあるから」
「お!ならフルーツサンドにするか!」
「スイカはサンドしないと思うけど……」
「スイカは熱中症予防にいいぞ!」
その優しさは嬉しいが、部屋が暑苦しいのは彼の能力だと思われる。
こうしてバナナを食べていると、南国にいるようだ。
そして、高校へと登校する時間、玄関先で。
「じゃあ、ナツ……くん。行ってきます」
「おぅ!行ってこーい!!」
「きゃーー!?」
ナツは、思いっきり制服姿のシズカを抱きしめる。
そのままチューでもされたら困るので、シズカは慌てて玄関の外に出た。
夏の神様は、良く言えば、人ナツっこい。悪く言えば、暑苦しい……。
夕飯もナツが用意してくれた。
インスタントや冷凍食品ではあったが、問題は……
「辛っ!!これ、辛いんだけど!?」
「そうか?普通だぞ」
熱々の食品に香辛料を山ほど振りかけて出されて、激辛料理と化していた。
そして、その日の夜、シズカは更なる問題に気付いた。
買い置きしてあったパンが異様な色をしているのだ。
「え?買ったばかりなのに、カビ?腐ってる?」
その時、部屋の壁際に設置してある温湿度計を見て気付いた。
部屋が、異常に『高温多湿』であった事に……。
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