第2話 その1

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第2話 その1

朝は空の色が一番薄い。 日が高く昇るにつれて、空の青さは増していく。 私は職員室に向かった。 そしたら、三崎くんがいた。 ノートの束を抱えている。 「山口先生見なかった?」 私が探しているのは、体育兼生徒指導兼2年3組担任の山口 慎太郎(やまぐち しんたろう)先生だ。 「見かけませんでしたけど。」 「次の時間体育あるのに、ジャージ忘れちゃってさー。今日は先生に体調悪いって言って体育休もうと思って。」  体育の先生は忘れ物と遅刻には厳しくて、結構面倒くさいらしい。 「他のクラスの人に借りればいいのでは?」 「私他のクラスに友達いない。」 と私は不貞腐れたように言った。 三崎くんは苦笑いした。 それでしばらく考える素振りを見せて、 「じゃあ僕のジャージ貸しますよ。」 と言った。 「え?」 「次の次に体育の授業があって、まだ着てないのでご安心を。」 「いやいや、いいよ。」 「休んだら、体育の成績下がりますよ?」 「男子のジャージ借りるのはちょっと…」 「サイズでかい分にはいいと思いますけど。」 「そう意味じゃなくて…」 「で、三崎くんに借りたんだ。」 「借りたというか、一方的に渡された。」 私はジャージの上着のチャックを閉めた。 胸元には三崎と白い糸で刺繍が施されている。 やっぱりブカブカしてるな。 袖長いし、ズボン引きずってるし。 三崎くんと私は大体20センチくらい身長差がある。 そんでなんかいい匂いするし… 今日の体育はバドミントン。 春、まだ肌寒さが残るとはいえ、体育終わりは少し汗ばむ。 体育終わったら、スプレーかけなきゃ… 「ありがと。これ。」 私は体育が終わった後、すぐに三崎くんの元へ行った。 次は三崎くんのクラスが体育の時間だ。 スプレーかけまくったし、大丈夫なはず。 それに、1年生の廊下に2年生の私一人いるのは何だか、居心地が悪い。 「今度、お礼させてよ。何がいいか考えておいて。」 「いえいえ。」 1年生の女子たぶん一軍と思われる女子達が、こちらを見てこそこそ話始めた。 まずいな。 三崎くんに何か悪影響を及ぼすかもしれない。 「じゃあね。また明日の部活で」 私は急足で廊下を駆け抜けた。 窓から鮮やかな青空が見えた。 早く明日にならないかな…
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