0人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話 その1
朝は空の色が一番薄い。
日が高く昇るにつれて、空の青さは増していく。
私は職員室に向かった。
そしたら、三崎くんがいた。
ノートの束を抱えている。
「山口先生見なかった?」
私が探しているのは、体育兼生徒指導兼2年3組担任の山口 慎太郎先生だ。
「見かけませんでしたけど。」
「次の時間体育あるのに、ジャージ忘れちゃってさー。今日は先生に体調悪いって言って体育休もうと思って。」
体育の先生は忘れ物と遅刻には厳しくて、結構面倒くさいらしい。
「他のクラスの人に借りればいいのでは?」
「私他のクラスに友達いない。」
と私は不貞腐れたように言った。
三崎くんは苦笑いした。
それでしばらく考える素振りを見せて、
「じゃあ僕のジャージ貸しますよ。」
と言った。
「え?」
「次の次に体育の授業があって、まだ着てないのでご安心を。」
「いやいや、いいよ。」
「休んだら、体育の成績下がりますよ?」
「男子のジャージ借りるのはちょっと…」
「サイズでかい分にはいいと思いますけど。」
「そう意味じゃなくて…」
「で、三崎くんに借りたんだ。」
「借りたというか、一方的に渡された。」
私はジャージの上着のチャックを閉めた。
胸元には三崎と白い糸で刺繍が施されている。
やっぱりブカブカしてるな。
袖長いし、ズボン引きずってるし。
三崎くんと私は大体20センチくらい身長差がある。
そんでなんかいい匂いするし…
今日の体育はバドミントン。
春、まだ肌寒さが残るとはいえ、体育終わりは少し汗ばむ。
体育終わったら、スプレーかけなきゃ…
「ありがと。これ。」
私は体育が終わった後、すぐに三崎くんの元へ行った。
次は三崎くんのクラスが体育の時間だ。
スプレーかけまくったし、大丈夫なはず。
それに、1年生の廊下に2年生の私一人いるのは何だか、居心地が悪い。
「今度、お礼させてよ。何がいいか考えておいて。」
「いえいえ。」
1年生の女子たぶん一軍と思われる女子達が、こちらを見てこそこそ話始めた。
まずいな。
三崎くんに何か悪影響を及ぼすかもしれない。
「じゃあね。また明日の部活で」
私は急足で廊下を駆け抜けた。
窓から鮮やかな青空が見えた。
早く明日にならないかな…
最初のコメントを投稿しよう!