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その3
やっと放課後になった。
「今日はおととい買った材料でクッキーを作ってみたいと思います。」
早苗ちゃんが仕切った。
声がよく通るし、みんなをまとめるのに向いてるな。
部員を3グループに分けて作業を行った。
まず、オーブンを170℃で予熱する。
次に材料の計量。
薄力粉120gに砂糖40g、バター60gと卵を一つ。
粉物はふるいにかけて、少しレンジで温めてバターを溶かし、卵をボウルに割り入れた。
そして材料をボウルの中で混ぜていく。
生地を綿棒で均一に薄く広げて、型抜きを行う。
私はハートの型を使った。
大体30個ほどできただろうか。
鉄板にクッキングシートを敷いて、型抜きした生地を乗せた。
オーブンで20分ほど焼けば完成だ。
焼けるまでの間、洗い物など片付けした。
10分経過したくらいで早苗ちゃんが、
「いい匂いがしてきたね。」
と言った。
「そうだね。」
と相槌を打ったけれど、
私には分からなかった。
10分後、オーブンがチーンと鳴った。
私達はオーブンを開けた。
ほんのり焦げ目がついたクッキーが並んでいた。
「「美味しそう」」
みんなが声を揃えて言った。
成功したみたいだ。
莉子が手袋をはめて、オーブンからクッキーの乗った鉄板を出した。
「早速食べてみよう。」
私は言った。
なぜだろう。
物凄く食べたい。
みんなで試食した。
私はクッキーを一枚つまみ上げた。
そして、口に運ぶ。
噛んだ瞬間は硬いと思った。
けど、しっとりしている。
おいしい。
また一枚クッキーをつまみ上げた。
おいしい。
「桃花先輩?」
美優ちゃんがびっくりしたようにこちらを見ている。
どうかしたのか。
他の子も。
少し顔が強張っている。
三崎くんが静かな声で言った。
「先輩…
どうして泣いてるんですか?」
「え?」
気付けば私の目からは涙がこぼれていた。
「みんなで作ったクッキーが涙が出るくらい美味すぎて。」
「嬉し泣き?ちょっとびっくりしたー」
莉子が言った。
三崎くんが私の頬に流れた涙をぬぐった。
「ほら、泣かないで。」
なぜ泣いたか、自分でも分からなかった。
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