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第3話その1
「先生に呼び出されたから、先に帰ってて。」
「職員室?」
「そう。」
「何かやらかした?」
莉子がニヤニヤしながら聞いてきた。
「何もしてないよ。」
私は職員室に行った。
「何で呼び出されたか柊さんわかってるよね?」
生徒に恐怖を与えるには充分すぎる第一声。
うちの担任佐渡 裕子先生に私は呼び出されてしまった。
「進路希望調査を名前だけ書いて出したからですよね?」
私は先生の質問に対して恐る恐る答えた。
多分これだ。
これしかない。
これ以外だったら、何のことやら。
「そうね。柊さん、確かに今具体的な進路を決めるのは難しいとは思う。けど、もうそろそろ大まかな方向性は考え出さなきゃいけないわよ。」
先生は私が白紙で出した進路用紙を差し出した。
「わからない。決められない。確かに今はそれでも平気だけど、3年生になったら、そうもいかない。先生やご両親は柊さんの進路を決めることができないから、自分で決めるしかないの。」
自分でもそんなこと分かっている。
「来週中までに書いてもってきて。」
「はい。」
私はため息を吐いた。
「失礼しました。」と職員室を出ると、その前で莉子が私の分のカバンを抱えて持って待っていた。
「遅い。」
莉子は不機嫌そうに行った。
そういえば教室にカバン置きっぱなしだった。
「ありがと。」
私はカバンを莉子から受け取った。
「帰ろっか。」
私達は中央階段を下った。
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