その2

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その2

放課後、私達は家庭科室に向かった。 「家庭料理部ってさ、いつも何してるの?」 私は莉子に聞いた。 「月曜日に何作るか決めて、近くのスーパーで買い出し。水曜日に実際に作って、金曜日に反省会。」 「反省会とかあるの?」 「反省会というか、まぁおしゃべりだね。 活動したことをまとめたり、こうした方が手際よく作れるとか、こういう盛り付け方が美味しそうに見えるとか。みんなで意見を出し合うの。」 てっきりもっとゆるく活動しているのかと思っていた。 意外としっかり活動している。 「そういえば、部活始まる前にみんなに自己紹介してもらうから、言うこと考えておいてよ。」 「わかった。」 なんかこういうの初めてだな。 家庭科室に着いたら、既に部員全員揃っていた。 「2年1組の柊桃花(ひいらぎとうか)です。今日から新しく入部しました。これからよろしくお願いします。」 と挨拶した。 何を言えばいいかわからないから、短く当たり障りの無いことを言った。 ぱちぱちと一年生が拍手してくれた。 その中の眼鏡をかけた大人しそうな1年生と目が合った。 彼女は少しはにかんだ。 その後、一年生一人ひとり自己紹介をしてくれた。 全員の名前と顔は何となく覚えた。 「部員10名。これで安心して部活ができるね。」 さーちゃんこと部長の津村早苗(つむらさなえ)さんが言った。 ちなみに副部長は莉子。 私は空いている席に適当に座った。 そういえば、莉子が1年生の男子1人入ったって言ってたけどいないな。 今日は休みなんだろうか。 「今日は月曜日だから、水曜に作るものを決めていきます。」 莉子が本棚からレシピ集を何冊か出してきた。 私は、ハンバーグの写真が表紙となっているレシピを開いた。 材料もシンプルで調理工程もわかりやすく書かれてある。 目次を見た。 豚の生姜焼き…鳥の唐揚げ…魚のホイル焼き… 本をパラパラめくっていると、私はあるページで手を止めた。 それはシチューの作り方が書かれたページだった。 思わず顔をしかめた。 けど、しばらくそのページから目を離せ無かった。 私はゆっくり本を閉じた。 嫌なことを思い出してしまった。 気を取り直すように、さっき目があった1年生に声をかけた。 名前は確か遠藤美優(えんどうみゆう)ちゃん。 「何か作りたいものある?」 「お菓子作り初心者なので、簡単なものから挑戦してみたいなと思って…」   美優ちゃんはクッキーのレシピが書かれているページを開いていた。 クッキーか… 私が最初に作ったお菓子もクッキーだったな。
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