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その3
みんなで話し合った結果、クッキーを作ることになった。
ガトーショコラとか、蒸しパンとか違う案も出たけど、早苗ちゃんが「基本から入りましょう。」と言って、クッキーに決まった。
まぁ、一年生と私は初めての活動だしね。
各々買い出しに行く準備をしていると、
「すいません、遅れました。」
と男子が1人家庭科室に駆け込んできた。
背が高く、切れ目が印象的な顔。
「三崎くんちょうど今から買い出しに行こうとしたところだよ。」
莉子が言った。
「すぐ準備します。」
と三崎くんは息を切らしながら言った。
スーパーはうちの高校から徒歩で歩いていけるくらいに近い。
「先輩って、前あった部の集まりに参加してましたっけ?」
みんなで歩道を歩いていると、三崎くんが話しかけてきた。
「いなかったよ。今日急遽入部することになったから。」
いきなり知らない人がいたら、誰だろうって普通思うよね。
「ですよね。俺三崎葵っていいます。よろしくお願いします。」
「柊桃花です。こちらこそよろしく。」
私は小さく会釈した。
「苗字ひいらぎっていうんですか?かっけー」
「そう?」
確かに自分の名前は結構気に入っている。
「俺苗字も名前も女っぽい名前だから、羨ましいです。」
「いい名前だと思うよ。」
三崎くんは凄いハキハキとした明るい感じで初対面なのに話しやすかった。
「三崎くん、料理好き?」
今度は私が質問した。
「はい。父親がホテルのシェフで、よく料理を教わったりしています。」
「そうなんだ。すごいねお父さん。」
やっぱり趣味は親の影響が大きい。
「うちのお母さんはね、小さい喫茶店を開いているの。」
「何ていう名前の店ですか?」
三崎くんは興味深々そうだ。
「ポポロっていう店だよ。」
たぶん知らないと思うけど。
「えっ俺その店のステーキ食ったことありますよ。」
「本当に?」
それには驚いた。
「先輩はやっぱお母さんの店継ぐんですか?」
「おじいちゃんおばあちゃんの代からある店だしね。継ぎたいけど…」
私は言いかけた言葉を飲み込んだ。
「けど?」
三崎くんがこっちをじっと見てる。
思わず目を逸らした。
「ほらもうスーパーに着いたよ。」
さっきの言葉の続きは言わなかった。
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