その5

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その5

家に帰ってきた。 私の家は一階が喫茶店になっていて、二階、三階が居住スペースになっている。 お母さんは一階の厨房で仕込み作業を行なっていた。 「ただいま、お母さん。」 「おかえり。」 お母さんはこちらを振り返って言った。 お母さんはどんなに忙しくても「おはよう」「おかえり」「おやすみ」とこの3つの言葉だけは必ず言ってくれる。 私は近くにあった椅子に座った。 いつもこうやって、今日あったことをお母さんに話す。 「今日は遅かったね。」 お母さんは鶏肉に切り込みを入れた。 「部活をしてきたの。莉子が入っている部活がね、人数少なすぎて廃部になりそうだったから、私が入ることになったの。」 「何の部活?」 「家庭科料理部。」 お母さんは手を止めた。 「莉子はあのこと知らないし、人数足りなきゃ廃部になっちゃうし仕方ないなーって思って。」 「桃花がいいならいいけど。」 お母さんはまた作業を始めた。 「今日から新しく出した新メニューのハンバーグ 桃花の分とっておいたから食べて。」 お母さんはハンバーグが乗ったお皿にお米よそってと野菜を並べて、スープと一緒に私の前に置いた。 「いっただきます」 私は手をぱちんと合わせた。 ナイフとフォークの使い方はお手のものだ。 ハンバーグは、にんじんと玉ねぎ、ピーマンを細かく刻んで練り込んであって、ソースは多分デミグラスソースだ。 「どう?美味しい?」 お母さんは私にいつも聞いてくる。 「柔らかい食感でいい感じだし、野菜が細かく刻んであるから、野菜が苦手な人でも食べやすいんじゃない?」 と言った。 味に関しては何も言えなかった。
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