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 「それで、休みの日まで何の用だ」  「『何の用だ』じゃない!!」  オスカーは目の前のテーブルを拳で叩いた。  「お前!自らオルブライトの姓を名乗っておきながら、今更になってクラウスナーの名を利用するとは、恥を知れ!!」  なんとなくこうなることは予想していたが、ユーインが考えていたよりもオスカーの被害妄想は強かったようだ。  「私がクラウスナーの名を利用した?一体いつ、どこで?」  「しらばっくれるなよ!お前みたいな奴が王女殿下と婚約なんて、クラウスナー侯爵家の名がなければありえないだろう!?陛下との話し合いで、我が家からの支援金の額でも引き合いに出したか?この卑怯者め!!」  要するにオスカーは、ユーインがクラウスナー侯爵家から支援金を多く引き出す事を条件に、リーリアとの婚約を陛下に迫ったとでも思っているようだ。  ──馬鹿らしい……  侯爵家のはした金ごときで王女を下げ渡す国王がどこにいるのか。  リーリアは大国の王にだって嫁ぐことのできる美しく賢い女性だ。  「オスカー。お前、昨夜の陛下の言葉を聞かなかったのか」  「あれは、お前がそう言わせたんだろう!!こんな魔道師風情に嫁がなければならないなんて、リーリア殿下もお可哀想に……!!」  魔道師である自分の妻となることがリーリアにとって本当に幸せなのか。  ユーインとて、迷わなかった訳ではない。  けれど、その不安も迷いも打ち消したのは、他の誰でもない、リーリア自身。  アカデミーで懸命に学び、魔道師と共に在ろうとしてくれたリーリアの努力だ。    「これ以上お前と話すことはないよ。支援金の事については、今後父上と話を進めさせてもらう」  「なっ……!!この話を父上から任されたのは私だ!!」  それも本当かどうか怪しいものだ。  どちらにしても、一度父親とはきちんと話さなければならないだろう。  「これは国の未来を左右する大事な計画であり、それを任されたのは私だ。これ以上余計な口を挟むようならクラウスナー侯爵家には計画から辞退してもらう」  「そんな事をしたら困るのはお前の方だろう!?」  「……いい加減にしろよ、オスカー」  怒気を孕んだ言葉に、オスカーは思わず身構える。  これまでオスカーに対し、一度たりとも言葉に感情を乗せることのなかった兄が、初めて見せた顔。  「陛下がクラウスナー侯爵家を選定したのは、私とリーリアの事があったからだ。勘違いするな。それと……」  ユーインは立ち上がり、鋭い眼光でオスカーを見下ろす。  「口の聞き方に気をつけろ。今の私は、家督も継いでいないお前が気安く口を聞けるような存在ではない」  「なっ!?……おいっ!待てよ!!」  しかしオスカーの遠吠え虚しく、ユーインは一度も振り返ることなく部屋を出ていったのだった。  「くそっ!バカにしやがって……見てろよ……」          
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