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 あの日、私の気が済むまで、黒い傘の中で話を聞いてくれていた。私の肩に触れようとした彼の手を、さっとよけてしまったにもかかわらずだ。  流す涙のすっかり涸れた私は、ただ起こったことを淡々と説明した。  人形のこと、ランドセルのこと、そしてひまわりのこと。  言葉がとめどなく溢れた。彼は何度も頷いた。  雨がひっきりなしに傘を叩く。止む気配はなかった。 「晴菜、俺は」  諒太が雨音を押し切るように切り出した。 「晴菜を守る傘になりたい。ひまわりの花も、見てるとつらいなら俺が引き受ける」  私は驚いて彼を見た。薄暗い空と黒い傘の中でさえ、彼の表情がはっきりと見えた。 「光の当たるところはあったかいだろ。お前は、そういうところにいるべきなんだよ。陽の光に当たりにいけ。たとえ眩しくてもな」  記憶の断片と彼から聞いた過去を合わせると、当時の記憶が蘇ってきた。  私は、ひまわりの花を投げ捨てたわけではなかったようだ。 「きれいに咲いたよ、あのときのひまわり」  諒太が微笑んだ。にきびの跡が押し上げられる。太陽のような笑顔──私はこの笑顔を見るために生まれてきたのだと確信した。  太陽みたいな人、というと、常に前向きで、声に張りがあって、目上だろうが何だろうがぐいぐい絡みにいく人のことをいうのだろう。諒太は全くといっていいほど当てはまらない。が、眩しくて、隣にいると心が温かくなるところは、まさしく太陽だ。そう考えると、陽の光に当たりにいけ、とは──。 「俺の傍から離れるな、って言ってるみたい」  声に出すと、余計に照れくささと嬉しさがこみ上げてきた。 「ん? なんか言った?」  きょとんとする彼が可笑しくて、愛おしかった。 「何でもない」
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