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曽根村、もとい諒太は引きつった笑みを浮かべた。
「お前の目的はそれか」
「だあって、諒太、あの子と仲いいじゃん。連絡先も知ってんでしょ? お願いだから」
両手を顔の前で合わせると、相手はそれを防ぐように掌を向けてきた。
「そうやって人を利用するような打算的な女は、俺は好きじゃないな」
「ほーら、そう言ってカッコつけたいだけで、本心じゃないでしょ」
「カッコつけてねえし。小学生の時ボロボロのランドセルで登校してた人に言われたくないな」
「ぐぬう」
言い返せず変な声が出た。私ははっと思いつき「でも」と切り出した。
「何だかんだ言って私と幼馴染みやってくれてんじゃん」
「幼馴染みというか腐れ縁だろ」
思いきり口をへの字に曲げた諒太に、私はにんまりと笑った。
「ほら、そういうところは諒太のいいところだよ」
諒太が優しいことを、私は知っている。驟雨に身を投げた孤独な少女を、助けたのだから。
はあ、と相手は盛大な溜め息をついた。
「素直に他人を褒めとけばかわいいのに」
「おやおや。よくわかってんじゃん」
腕を組んでふんぞり返る。片眉をぐっと持ち上げ、俗に言う「ドヤ顔」をしてみせた。
「あれって二組の松川さん?」
教室の隅から、急に名前を出される。視線をやると、女子が三人固まって話していた。他クラスの生徒が教室にいれば目立つのは当然だ。
「そぉそぉ。あの二人、お似合いだよねぇ」
「ほんと。付き合えばいいのにね」
会話を繋げたのは、最初に私の名前を出したのとは違う女子二人だった。一人は語尾を伸ばしたした喋り方が特徴的な、樋野さんだ。
「え、付き合ってないの?」
私の名前を出した最初の一人がさらに質問する。
「うん。付き合ってないよぉ」
「え、じゃあ二人はどういう関係?」
「幼馴染みでしょ」
私の話題はまだ続いていた。諒太くんのほうはねぇ、とか、あの二人ってさぁ、とか、三人の弾んだ声が聞こえた。
私は内心、やれやれと呆れていた。
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