素直になりたい

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バレンタインは好きな子にチョコレートをあげる日なんだよとお母さんに教えてもらって、わくわくしながら一緒に作った記憶がある。 幼稚園児だった私が初めてあげた相手は、隣の家に住む同じ年の柊吾(しゅうご)。 小学3年生ぐらいまでは抵抗なく渡せていたのに、その現場を目撃した男子に「瑠璃(るり)は柊吾のこと好きなんだって、ヒューヒュー」とからかわれたのがきっかけで、それからはこっそり渡すようになった。 作りすぎたからとか、クラス全員の男子にあげることになったとか、何かしらの理由付きで。 中学生になって身長が抜かされた頃から状況が変わり、私以外の女の子からも貰うようになった。誰かと付き合ったわけじゃないのに何だか面白くなくて、しばらく1人でふてくされていたっけ。 手作りに自信がなくなって市販品に変更したのもこの頃。本当は好きなのに、幼馴染みだから義務であげている感を漂わせていた。 うん。振り返ってみても本当にかわいくない。 何だかんだ言いながら、毎年欠かさず渡していることだけは我ながら凄いと思うけど。 今年……、今年こそは普通に渡すんだ――― 何度目なのか分からない決意を胸に、ソワソワしながら2月13日を過ごしていた。
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