素直になりたい

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クラスこそ違えど朝から渡す機会はあったのに、目的の物はスクールバッグの中に入ったままだった。 大学は別になってしまうからと、背伸びして買った豪華で大人びたチョコレート。シックな包みが個人的にお気に入り。 でも、今更ながら後悔していた。気合いを入れすぎている感じがして、いつも以上に渡しづらくなってしまっていたから。 もー、私のバカ!何でもっと無難な物を選ばなかったんだろ。こうなったら他の物を買うしか…… 幸い、今は駅ビル内のカフェにいるのでチョコレートを売っているお店には困らない。問題があるとすれば、どういう理由で買いに行くかってことのみ。 「瑠璃、お前眉間にシワ寄ってるぞ」 行き交う人々をガラス越しに眺めながらそんなことを考えていると、ふいに名前を呼ばれたので心臓が跳ね上がる。 慌てておでこを手で隠したら「いや、隠せてねぇし」と笑われた。 ムカつくのに、フハッと笑った顔に見惚れてしまう。柊吾の笑顔に私は弱い。
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