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また明日
私しかいない教室は、風が通りすぎているというか、ただ空虚な空間が広がっているような気がした。のろのろとした帰り支度が終わる頃には、既に私はその乾いた空間にいたたまれない気持ちになっていた。それなのに、なぜか離れるのが名残惜しかった。
私はストーブの横に立った。ここからだと、校庭だけでなく、さらに遠くまで見渡せる。微かに見える菜の花の黄色が目にまぶしい。
もう、向こうでは春が始まりかけているのかな。実際、そこに住んでここに通う生徒がいる。そう思ったら、よく分からない気持ちがこみ上げてきた。
いけない。運動して笑ったら、少し健康になりすぎたかも。…まぁ、いいか。
私の中学校生活は、家の窓から向かいの菜の花畑を眺めるところから始まった。中学受験の終了とともに、英才教育には休止符が打たれていたから。宙づりのまま、誰からも忘れ去られたように感じていた。
あの頃、夜になると私は空を見上げた。一晩中輝く北斗七星を頼りに、彼方からの光を探したっけ。
学校に通い始めてからは、翔ぶように時間が過ぎていった。ただでさえ人馴れしていない私は、始め半日も教室にいるだけでへとへとになった。勉強の成績が悪かったときも、部活が辛かったときもあった。今年は自分の弱さを感じることも多くて、しょっちゅう自己嫌悪に陥っていた。
それでも、優しくて知的な仲間たちと織りなす物語はいつだって美しかった。その舞台である学校は、まさに夢の里だった。この三年間―特に最後の一年―を通して、居場所がなかった私にとって、教室は帰る場所になったんだ。
こんな私を受け入れてくれて、認めてくれて、本当にありがとう。季節が巡り、仲間が増えても、一緒に頑張らせてください。いつも気に掛けてくださった先生、本当にありがとうございました。35個の机に向かってなら、硬くならずにそう言えた。
軽くなった足取りで出口に向かい、夕日を受け止める扉を開けた。
振り返ると、常磐色に染まったたおやかなカンバスが、明日の訪れを待っていた。
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