告白

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「彼女が言う通りその本が好きなら、私はいじめなんかしちゃいけなかった」  松島君は黙って聴いている。 「その時、決意した。私はいじめに加わらない。もし、いじめられている人がいたら助けようって。でも、それで彼女に対してしたことの罪が消えるわけではない。結局、彼女は卒業式の日も学校に来なかった。私達は彼女の心の一部を殺してしまった」  彼女は和を乱していたのではない。自分の意見を言っていただけだ。私達が勝手に、彼女を和の中から除外したのだ。 「だから、松島君からの告白を受ける資格なんてないの。そして、心から幸せを感じる資格もない。だから、ごめんなさい」  私は頭を下げた。松島君は私に幻滅しているだろう。風の音が聞こえる。まだまだ、風が冷たい。私は松島君に背を向けた。 「待って。原田さん」 「何?」  私は振り向かずに言う。 「確かに、原田さんがしたことは悪いことだと思う。けど、いじめをしても反省してない人が多い中で、きっかけがあったとはいえ、反省した。そして、その反省から、いじめを止めるという行動につなげることができた」 「でも…。私は彼女に対するつぐないをしていない」 「そうだけど、宮田さんを救うことはできた。それは事実だ。宮田さんは原口さんと出会って良かったと思う」 「…そうなのかな」 「原田さんも心に大きな傷ができた。それは一生、消えることはないと思う。だから…」  松島君の声が、私の心の奥をふるわせる。 「その傷ごと、原田さんを好きになりたい」  風が止まった。周囲の音が聞こえない。松島君の声だけがはっきりと聴こえた。  私は松島君を見て、何かを話そうとした。でも、なかなか、声を発することができない。  でも、私の気持ちは決まっていた。  その時、本の主人公の言葉を思い出した。 「優しさって、小さなことでもつなげていけば、きっと大勢の人を救えるよ」  やっと、言葉を絞り出す。  その答えに松島君が笑った。
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