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会社の最寄駅で電車に乗り、私の家まで一緒に帰る。
駅のホームで電車を待っている間、会社の人がいないか、少しだけ気になってしまった。新入社員である祐くんとの関係は、晴美さんや大橋くん以外には知られていないから、もし見られて変な噂が立つのは良くない。私はともかく、入社したばかりの祐くんにはダメージが大きいのではないだろうか…。
待ち合わせ、乗り換えの駅とかにすれば良かったかな…
そんなことを考えていると、隣に立つ祐くんから声を掛けられた。
「…美織、怒っているか?就職先を黙っていたこと…」
どうやら祐くんは、私の様子が怒っているものだと思ったらしい。
「え?」
確かにびっくりはしたけれど、怒っているわけじゃない。でも、何でそんなふうに思ったのだろう…
「昼休みも驚いていた以外、何も言ってこないし、今も口数が少ないから…」
そう言われ、私は慌てた。祐くんは不安そうな表情を浮かべていた。
確かにびっくりはしたけれど、怒るつもりはないし、口数が少ないつもりもなかった。
「お…怒ってないよ?ものすごくびっくりしたけれど…。あとはその、ちょっと考え事をしていて…」
私は、お昼休みから今まで、考えていたことを正直に話すことにした。途中電車が来たので、それに乗り、乗り換えの駅でまた続きを話した。
やっとのことで一通り話し終えると、祐くんは小さく溜息を吐いた。ひょっとしたら、言わない方が良かったのかもしれない。
「美織は俺とのこと…会社の人には言わないでおきたい?それとも、聞かれたら普通に答える?」
…え?
一緒の会社だなんて思っていなかったから、確かに決めてはいなかったけれど…
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