534人が本棚に入れています
本棚に追加
/272ページ
「その…最近さ、雰囲気が女らしくなったというか…」
「…元々女ですけれども」
「だからそうじゃなくて!」
その声は若干怒気を孕んでいた。
「綺麗になったなって思ったんだよ!」
「は…?」
大橋くんの口から、まさかそんな言葉が飛び出て来るなんて夢にも思っておらず、私は一瞬フリーズしてしまった。
当の本人は、なぜか赤くなっていた。
「…明日は大雨かな」
やっと絞り出した言葉がそれだった。
「お前…人が恥ずかしい想いしてんのに」
大橋くんは、ジロリと私を睨んだ。
「だって、大橋くんからそんなこと言われると思ってなかったもん…それに…」
君には好きな人がいるでしょ、と言い掛けて止めた。大橋くんも言葉の続きは分かっているようだった。
「…まぁそりゃそうだわな」
その後、何となく気まずい空気になってしまい、私が電車を降りるまで、会話はなかった。
大橋くんと別れ、一人になると、私は祐くんにメッセージを送った。
あれから、今まで通りに連絡を取り合っている。今日は、飲み会があるから連絡が遅くなる、とは言ってあった。
『お疲れさま。今、帰っているところだよ。祐くんはお仕事中だよね。頑張ってね』
時間は21時過ぎ。今日の仕事が何時からかは知らないけれど、恐らくもう仕事中だろうと思い、そう送った。
すると、すぐに返信が来た。
『仕事と飲み会お疲れ様。気をつけて帰ってね。俺はもう少ししたら家を出るよ』
どうやら、今日はまだ仕事の時間ではなかったらしい。
『ありがとう。お仕事これからだったんだね。気をつけていってらっしゃい』
最初のコメントを投稿しよう!