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家を出る時間が差し迫っている。ひとまず、ワンピースを着て、その上から無地の白いカーディガンを羽織る。メイクをして、ショルダーバッグを持つと、急いで待ち合わせ場所に向かった。
間もなく梅雨明け。外は少し動いただけで、じっとりと汗をかく気温になっていた。
待ち合わせ場所は、池袋駅の東口。
ただ、私はいつも東口がよく分からなくて、反対側の西口にはさすがに行かないものの、東口周辺で迷子になってしまう。
それもあって、少し早目に行きたかったのに、ギリギリになりそうだった。
ただ、この日は幸運なことに、1発で東口に出ることが出来た。遅刻は回避出来そうだ。
「美織!こっち!」
先に着いていたのか、祐くんが手を振りながら待っていた。
「わー!祐くん、ごめん!待たせちゃったね」
私は慌てて駆け寄った。
「全然!俺が早く着いちゃっただけだから、大丈夫だよ」
祐くんはクスッと笑って言った。
「…じゃあ行こうか」
「うん!」
祐くんの合図で、私達は、水族館のある、サンシャインシティに向かった。
前回のことがあったので、気まずくならないか少し心配ではあったけれど、それは大丈夫そうだ。
道中、さすがに土曜日ということもあり、駅もさることながら、なかなかの人混みだった。
祐くんも同じことを思ったのか、
「さすがに土曜日の池袋は混んでるね」
と、言ってきた。私は思わず笑ってしまった。
「え?どうしたの?」
祐くんは驚いていた。
「今、私も同じことを思っていたから、面白くて」
私は笑いを堪えながら、そう答えた。
「………」
祐くんは黙っていた。私、何か変なことを言ったかな…
「…祐くん?」
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