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少し心配になって声を掛けると、祐くんはハッとした表情になった。
「あっ、ごめん…ちょっとボーッとしてた」
「大丈夫?体調悪い?」
「え?全然!元気だよ!ごめんな、心配かけて。何でもないから」
「それなら良いんだけど…」
本当に大丈夫か不安になりながらも、私達は道を進んだ。
しばらくすると、目的地のサンシャインシティが見えてきた。
そこからさらに、水族館へ行くエレベーターを目指して歩く。駅の改札を出てから、かれこれ10分以上は経っている気がした。でも、水族館に行けるという楽しみが、疲れを感じさせなかった。
エレベーターホールに着くと、そこにはすでに10数組が並んでいた。恐らく、昼時だったからこれくらいで済んだのだろう。
私達は、その最後列に並び、エレベーターに乗る順番を待った。やっと乗れた、と思ったら、ギリギリの人数で乗るため、かなり窮屈だった。
あとから乗ってくる人にどんどん押されていく。
その様子を見ていた祐くんは、すぐさま私を壁側にピタリと付け、私に向き合い、覆い被さるような形になった。
「美織、少しの間だけ、ごめんな」
祐くんが小声で謝る。
人波から守ってもらった嬉しさと、顔と声が近くて、心臓の音が異様にうるさい。
「顔、赤いけど苦しい?」
そう聞かれ、首を何度か小さく横に振った。それを見た祐くんはホッとしていた。
「少しだけ我慢してな?」
我慢して、と言われたけれど、全然我慢してなんかいない。窮屈で嫌なはずなのに、なぜかもう少しだけ…と願ってしまう。
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