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一方で、そんなことを考えている自分にも驚きを隠せなかった。恥ずかしくて祐くんの顔をまともに見れず、俯いてしまった。
しばらくして、ようやく水族館があるフロアに着いた。後から乗った人が、今度は先に降りていく。窮屈さからは解放された。
「よし、じゃあ俺達も行こうか」
祐くんからも解かれ、この前と同じ、少し寂しい感覚が残る。でも、それを気付かれないように、笑って、うん、と答えた。
***
「うわぁ!キレイ…」
チケットを購入した後、私達は、早速水族館へと入った。
水槽の中を優雅に泳ぐ様々な魚達に、私はうっとりしていた。
特に、浅いサンゴ礁をイメージして作られたという大水槽は見ごたえがあり、足を止めて、スマホやカメラで写真を撮る人も多くいた。
「本当だな。見てると癒やされるというか」
私が見ている隣で、祐くんもじっと水槽を見ていた。
「あ、祐くん!見てみて!こっちに来てくれたよ!」
ついつい、テンションが上がり、はしゃいでしまう。こちらに向かって泳いできた魚に向かって、こんにちは、と声を掛けた。
「あはは、この子かわいいね」
「本当だ」
そうして2人で笑い合う。
こうやって自然に笑えるの、楽しいな…
ふと、そんなことを思ったら、何だかとても嬉しくなった。
「…何ニヤけてるの?」
突然祐くんにそう言われハッとした。どうやらめちゃくちゃ顔に出ていたらしい。
「え!な、何でもないよ?!」
慌ててそういうと、祐くんはプッと吹き出した。
「よっぽどお気に召していただけたようで」
どうやら、はしゃいでいるものと思われたらしい。
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