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「うーん、自信を持ってこれって言えるものはないかも…」
いくら好意を持たれていても、こういう回答を聞かされては、好意も薄められてしまいそうだけれど、私は正直に答えた。
「ふーん…じゃあさ、よく作るものは?」
祐くんが質問を変えてきた。
「よく作るもの?」
「そう」
私が聞き返すと、祐くんは頷いた。
「そうだなぁ…野菜炒めとかかな…?あとは、チャーハンやパスタを色々アレンジしたりはしてるけど…」
そう返すと、祐くんはとても興味津々な表情になっていた。
「え…めっちゃ食べてみたい」
「えぇ?!」
まさかそんな風に言われるとは思わず、私は驚いて声を上げた。
「でも、本当アレンジとか、実験みたいなものだよ?何と何が合うのかな、みたいな…」
自分が合うと思っていても、他の人はそうとも限らない。もし食べてもらったときに、美味しくなかったら、それはかなり申し訳ない。そう断っても、祐くんは引かなかった。
「そういうの楽しそうじゃん。今度食べてみたい」
祐くんは楽しそうに笑っていた。
「…分かった。じゃあ、今度ね」
いつになるかは分からない曖昧な約束だけれど、祐くんがあまりにも楽しそうだったから、つい、そう言ってしまった。
それからも会話を楽しみながら、食事が進み、最初のスパーリングワインを最後にもう一度注文した。そして、それを飲み終えてから、今日はお開きとなった。
「なんか…名残惜しいけど、そろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね」
時間は22時前。なんだかんだ、結構長くお店にいた。
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