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ひとまず歩いて駅まで戻ってくると、相変わらず行き交う人でいっぱいだった。
「美織はここからどうやって帰るの?」
「私は山手線で渋谷まで行ったら、そこで乗り換えだよ」
「あ、俺、新宿乗り換えだから、途中まで一緒でいい?」
「もちろん」
お互いの帰り道を確認すると、同じ改札口から同じホームへと向かった。
ホームは、平日と比較して人がまばらだった。適当な場所に2人で立ち、電車が来るのを待った。
「あのさ…ちょっと手を出して?」
祐くんが突然そう声を掛けてきた。不思議に思いつつも、彼に手のひらを出すと、何かが乗せられた。
「えっ…?」
手のひらに乗せられたそれは、私が水族館のショップで見ていたキーホルダーだった。
「これっ…!」
私は驚いて言葉の続きが出なかった。
「美織、眺めてたのに買わないって言ってたから…」
いつの間に買ったんだろう。
祐くんは照れくさそうにそっぽを向いて、そう言った。見られていた気恥ずかしさはあったけれど、私は、祐くんの心遣いが嬉しくて、胸が温かくなるのを感じた。
「祐くん…ありがとう。大切にするね」
私がそうお礼を言うと、祐くんは照れながらも、おぅ、と返してくれた。
やがて電車が到着し、私達はそれに乗った。幸い席は空いていて、近くにあった席に2人共座ることが出来た。
「今日は、というか、今日もありがとう。すごく楽しかったよ」
私は、改めて今日一日のお礼を祐くんに伝えた。
「こちらこそ。一緒に遊べて楽しかったよ。また行こうな」
祐くんも笑ってそう返してくれた。自然と「また」と言ってくれたことが、とても嬉しかった。
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