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「うん、また行きたい!次はどこかな〜」
私は頷いて、次の行き先を考え始めた。これからだんだん暑くなってくるから、屋外よりは屋内かなぁ…などと言っていると、祐くんが、お台場の方とか?と提案してくれて、盛り上がった。
そうこうしているうちに、電車はあっという間に新宿駅に着いた。
「じゃあ、俺はここで」
「うん、またね」
隣に座っていた祐くんが立ち上がる、そのときだった。祐くんは突然、膝の上に置かれていた私の手をそっと優しく握った。
「気をつけて帰ってな」
静かにそう告げると、手を離し、彼は電車を降りていった。
「あっ…」
電車の扉が閉まり、再び走り始める。
私は驚いてしばらく固まっていた。
やがて、今日一日を思い出していた。思えば、前回、手を繋いだり、長い時間抱きしめられたりしていたのに、今日は祐くんが私に触れることはなかった。
でも、さっき手を握ったのは…もしかして、今日一日ずっと触れるのを我慢していたから?本当は手を繋いだりしたかった?
本当の所は、祐くんにしか分からない。でも、少なくともきっと彼は、私の気持ちを優先して考えてくれたんだ、ということは分かった。
時々性急過ぎるところもあるけれど、肝心なところは私に合わせてくれた…
そのことに気付き、さらには祐くんに惹かれている自分がいることにも気が付いた。
ふと、もらったキーホルダーを眺める。
どんな気持ちでこれを買ってプレゼントしてくれたんだろう…
なんだか胸がとても切なくなる。
こんなに早く自分の中で、結論が出つつあることに戸惑いながら、初めてのデートは終わった。
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