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そんなに長いこと待たないはずなのに、祐くんが来るまでの時間が、とても長く感じた。
やがて、電車が到着したのだろう。
降りてきた人達に混じって、祐くんの姿が見えた。こちらに気付いたのか、祐くんが軽く手を振る。
「美織!」
改札を出てすぐ、祐くんは私の方に駆け寄って来た。
「迎え、わざわざありがとうね」
「ううん、スーパーに寄る用事もあったから、大丈夫だよ」
自然に話せているかすごく不安になりながらも、なるべく平静を装って話した。
「そっか。じゃあスーパーは…もう終わったの?」
祐くんは、私が手に持っていた袋を見て察したようだった。
「うん、祐くんが来る前に行ったの。その方が早いかなって思って」
「じゃあ、これ俺が持つよ」
祐くんはそう言って、私が持っていた袋を手に取った。
「そんなの悪いよ」
「いいって。これくらいさせてよ。これからごちそうになるんだし」
にっこり笑って祐くんは言った。
「あまり期待されると怖いんだけど…」
思わずそう漏らすと、祐くんは楽しそうに笑っていた。
私達はそのまま、私の自宅に向かった。
***
「ここがうちだよ」
自宅に着いて、祐くんを家に上げた。
「お邪魔します」
祐くんは丁寧に挨拶をして中に入る。その様子が何だか可愛くて、思わずクスっと笑ってしまった。
「え?何か変だった?」
驚いた様子の祐くんが、私にそう訊ねる。
「ううん、全然」
私は慌てて否定した。
「あ、お買い物袋ありがとう。受け取るね。部屋はこっちだよ」
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