繋がる気持ち

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そんな笑顔を見てしまい、心臓が大きな音を立てた。急に恥ずかしくなって、祐くんの顔が見れなくなってしまい、そっと彼から視線を逸らした。 「…美織?どうした?」 そっと逸らしたつもりだったが、どうやらバレてしまっていたらしい。祐くんが心配そうな顔付きになった。 「あっ…ううん、大丈夫、何でもない…」 なるべく笑顔で言ったけれど、言う程、大丈夫ではなかった。昨日、自分の気持ちを自覚したばかりだったし、予定外だったこともあり、いざ本人を目の前にすると、平静を装うので精一杯だった。この間のデートのときの方が、まだ自然体だった気がする。 それから沈黙が流れる。 それまでは普通の空気だったのに、私が視線を逸らしたことで、変な空気になってしまった。 何とか状況を打開しなくちゃ、何か話さなくちゃと私は口を開いた。 「あのね、祐くん…」 話し終わる前に、腕をぐいっと引っ張られた。祐くんに抱きしめられた、ということに気付くまでに数秒かかった。 「えっ…?」 私は突然のことにパニックになって、その場から動けなくなってしまった。自然と身体が強張る。すると、大丈夫だ、と言うように、祐くんが私の頭を優しく撫で始める。 「ゆう、くん…?」 かろうじて出た声で、彼の名を呼ぶ。祐くんは黙ったままだ。 頭の中で、初めて会った日のことがフラッシュバックする。 あのときは怖かった。今も怖くないと言えば嘘になるけれど、少なくともあのときとは違う感情があった。気恥ずかしくて、でも少し嬉しくて、だからこそ、どう反応したらいいか分からない…そんな気持ちだった。
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