褪せる日々

3/7
前へ
/7ページ
次へ
「久しぶりに皆と顔合わせてさ、蘇ったの。昔一緒によく遊んだじゃん」 「ほかの奴も交えて、だろ」 「そうだけど、特別じゃなかった?」 お互い、私たち─── そう続けた彼女の言葉に、脈が大きく荒波を立てた。思い当たる節があったからだ。 同じテニスサークルに所属した同級生で、女子が苦手な僕が唯一話を弾ませた女子。それが目の前の彼女だった。 社交的で、太陽のように明るくて。しかし、どこか笑顔が笑っていない女の子。 ──『なんで無理して笑ってんの』 何がきっかけでそう言ったか、どこで言ったかなんて覚えていない。しかしおそらく、これが引き金だったのだろう。 それから彼女は事あるごとに僕を気に掛け、諸々の集まりにも無理やり参加させられた。当時は不本意にも、彼女から輪が広がった。 『ねぇ、何飲んでるの?それ美味しい?』 輪の中。あるときは僕のグラスに薄い唇を寄せてきたり、 『あ、やばい……終電逃した』 あるときは僕だけに聴こえるよう、そっと耳打ちをしてきた。 常に男の影があった彼女に、僕は何も期待はしていなかった。それでも、いざというとき〝友人〟として僕を頼ってくれることは嬉しかったし、満更でもなかった。 きっと、彼女の中で僕は〝特別〟なのだろう。 四年間、その言葉で必死に虚無感を埋めていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加