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初めてのデート
俺が「好きだった」と言ったら、意外なことに恵里は泣いてしまった。俺が避けていたせいで嫌われたかと思っていたらしい。
「ごめんな。好きだから……離れるのが嫌でどうしたらいいかわからなかったんだよ」
素直にそう言ったら、泣きながら笑って、それからグーで殴られた。
恵里の泣き顔なんて初めて見た。
卒業式の日、今まで共に学んだ仲間たちや先生と別れを惜しみ、恵里と二人で帰った。いつもとおんなじ。ただいつもとちょっとだけ違うのは、緊張しながら二人で手を繋いでいる事だった。
帰りの道中、春休みに遊園地に遊びに行く約束をした。
初めてのデート。恵里の家の前で別れ、俺は部屋にこもってデートに着て行く服をどうするかその日一日悩みまくった。
デート当日──
俺は持っている洋服の中から一番カッコいいのを選んで髪もセットし、意気揚々と恵里を迎えに行った。きっと俺を見てビックリするだろうな。我ながらかなりカッコいいって思ったんだけど、家から出てきた恵里を見て俺の方が驚かされた。
恵里は俺の知らない、綺麗な女の人になっていた。
「お待たせ。行こっか」
恵里の態度が余裕たっぷりで、それがなんだか悔しくて、俺ばっかりドキドキさせられてるのが納得いかずについつい憎まれ口を叩いてしまう。それでもそんな俺に怒ることもせず、恵里は終始楽しそうに笑っていた。
なんだよ。恵里ばっかり大人っぽく振る舞いやがって。
遊園地では、二人ではしゃいで走り回った。こうなると恵里もやっぱりいつもの恵里だ。恵里と一緒に遊園地に来たのは初めてだったけど、ジェットコースターとかハードな乗り物も好きみたいで凄く楽しかった。
「何お前、足どうかした?……痛いのか?」
帰りの電車の中で恵里は口数少なく、時折足を気にしているようだった。最寄駅についてからも段々と恵里の歩くペースが遅くなる。見ると歩き方がちょっと変。靴擦れかな? さっき少し走った時に挫いたのかな?
気になったからなんとなしに聞いてみた。
「……なんでもない」
「ふうん、なら行くぞ。遅くなっちまう」
一応恵里も女の子だ。親公認とはいえ、あまり帰りが遅くなるのはよくないと思い、俺はちょっと焦っていた。
「あ、ちょっと……待って。ごめん……やっぱり待って」
恵里は急に恥ずかしそうに顔を背ける。折角繋いだ手を離そうとするから慌てて握り返し、俺は自分の方へ引っ張った。
「なんだよ、急に止まるなよ。どうした?」
「……わかんない? もう! 少しでも可愛く見せたくて慣れない靴履いて来ちゃったの! ちょっとは察してよ! ほら……腕貸して」
真っ赤な顔をして俺の腕にしがみついてきた恵里にドキドキする。
何こいつ……めちゃくちゃ可愛いじゃん。
やべぇ、にやける。
手を繋ぐだけでドキドキなのに、こんな不意打ち反則だ。
「公園寄ってこ? ちょっと休みたい……」
「うん」
恵里にぴったりと寄り添われながら、俺たちはガキの頃からよく遊んでいた公園に立ち寄った。
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