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告白
小学校の卒業式の前日、俺は意を決して恵里に告白をした──
恵里は俺の家の斜め前に住んでいて、それこそ赤ん坊の頃からずっと一緒。親同士仲がよかったせいもあり、節目節目の記念日の写真も全て恵里と一緒に写っている。
正直兄妹のように育ってきたから、今更恵里が可愛いだなんて俺はどうかしちゃったのかと思ったけど、どうもしてない……可愛いんだからしょうがない。
高学年になった途端、恵里がモテ始めて正直焦った。恵里が告白されてるのを見てどうしたらいいのかわからくなったし、俺以外の奴に笑顔を見せてるのがたまらなく嫌だった。それでも顔を合わせば素直になれずにお互い憎まれ口叩いたりからかったり、前はそれでよかったけどもうダメだった。
恵里が俺のことを好きならいいのに──
「私、中学は附属行くんだ。だからこうやって一緒に登校するのも後少しだね。うるさいのいなくなってせいせいしちゃう?」
いつもと変わらない朝、いつもと変わらない笑顔で恵里が言った。
は? そんなの聞いてないし。
これからも当たり前に、中学も恵里と一緒だと思っていた。恵里が言ったこの言葉はこの日一日どう過ごしたのか覚えてないほどに、俺にとって衝撃的だった。
それからはどう接したらいいのかわからなくなって、俺は恵里を避けた。最初のうちは恵里の方から突っかかってきたりしたけど、そのうち恵里も俺を構わなくなった。寂しいのと悔しいのと、どうしたらいのかわからないのと……俺はずっともやもやしたまま過ごしていた。
あっという間に卒業式が迫ってくる。卒業したらもう会えない。
目の前にいるのに、毎朝「おはよう」って当たり前に挨拶を交わして、冗談を言ったり、からかったりしながらお互い新しい制服を着て「スカート似合わねえな」なんて言ったりしながら、また同じ毎日を過ごすもんだと思ってたのに……
中学変わっちまったら朝だって時間も違うだろうし、それにまた恵里が誰かに告白されても俺、わからないじゃんか。
そんなの冗談じゃない!
誰かに先を越されるくらいなら俺が告白すればいいじゃん、と思ったものの、今更どのツラ下げて告白なんてすればいい? 本気で受け止めてもらえないかもしれないって思ったらどうしても勇気が出なかった。
物心ついた時からずっと一緒にいた恵里。幼い頃はお互い素直に思いを言い合っていたはずなのに。恵里だって今でこそ俺に対して生意気なことを言ってくるけど、俺がしょうもないことを言ってからかうから口うるさくなってるだけで、本来はとっても優しくてはっきりとものを言える真面目ないい子なんだ。
そう、だからずっと一緒にいた恵里は俺の気持ちをわかってくれるはず……告白の結果が上手くいかなくても、俺のことを笑ったり、からかったりはしないはず。
そして俺は卒業式を待たず、前日に俺の部屋に恵里を呼び告白をした──
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