俺の恋人

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俺の恋人

 俺の恋人はとてもお喋りで活発。容姿端麗、明るくて人気者。小さな頃から周りには人が絶えない。そんな彼を俺はずっと見て来た。  幼稚園の頃はいじめっ子から守ってくれた。小学校に上がると口下手な俺を沢山の友達の輪の中に入れてくれた。中学に入る頃には俺はもう彼のことを特別に見ていた。  だってしょうがないじゃないか……  俺にとってこいつ以上のヒーローは存在しない。  自覚して「憧れ」から「好き」に変わるのはあっという間だった。「好き」の気持ちがどんどん膨れ上がるもののそれを伝えるすべはなく、ただ黙ってついて行くことしか出来なかった。 「優弥、好きだよ。僕と付き合ってください」  信じられなかった。  男同士だというのに、何も言わずに自分の気持ちが伝わった。そしてそれを察して彼の方から告白をしてくれた。  嬉しくて嬉しくて勿論ふたつ返事でOKをした。  付き合い始めてからは毎日が楽しかった。  俺だけに見せる優しい笑顔。  俺だけに見せる怒った顔。  そう、俺だけが特別……  たまに喧嘩もする。些細な事で機嫌を損ねる。  いつも饒舌なあいつもこういう時は黙ってしまい沈黙を貫く。怒ってるという事を全身でアピールする。でも黙って唇を尖らすのが正直とても可愛い。 「……ごめんね、愛してる。許して」  そう言って、その可愛い唇にチュッとするといつもの笑顔が顔を出すんだ。  誰が悪いとか、この際どうでもいい。  こういう時くらいしか、恥ずかしくて自分からキスなんて出来ないから。  だから俺はありがとう……という気持ちでキスをする。
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