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二人は家の中で机を挟んで座った。
「お茶でも飲みたいですねー」
少年が何の気なしに言うので、男は呆れた。
「君は、この世界のことについて、まだ何も分かっていないようだね」
「えっ」驚く少年に、男は静かに言った。
「この世界では、何も食べられない。何も飲むこともできない。そういう風に我々の体が出来ているのだ。おまけに日も沈まない。眠くもならない」
「じゃあ、おじさんは今まで何をして過ごしていたんですか?」
男は持っていた煙草を吸い、ふぅっとふかすと、ゆっくり言った。
「書物を読んでいた。この家にはなぜかたくさんの書物があってね。いくら読んでも読み尽くす気配がない」
「本ですか!僕もこの世界に来る前は好きでした!図書館にこもって朝から夜までよく読んだなー」
「君も、本が好きなのかい?」
「はい!」
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