0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
それから男と少年は談笑に耽った。
自分が食べることも寝ることもできないことなど忘れ、
いつまでもしゃべった。本来の世界ならば日が暮れるまで。
話に一通り花を咲かせたあとしばらくして、少年は尋ねた。
「この家に来る前は、あなたはどうしていたんですか?」
男は言った。
「君と同じだよ。人も動物も、虫1匹いない静かな空間で、ひたすらさ迷い続けた。そうしてしばらくしたら、この家にたどりついた」
「ですよねー。僕もそうでした」
少年は笑った。
「でも、ここであなたと出会えてよかったです!話し相手がいるっていいなー」
「しかし、君と私では決定的に違うことがある」
「何ですか?」
「君には帰る場所がある」
最初のコメントを投稿しよう!