静寂の森

6/12
前へ
/12ページ
次へ
男は煙草をふかした。 「君は、ここに来る前のことを覚えているかね」 「はい…」 少年はうつむいた。 「学校で、僕をいじめてくる奴がいたんです。僕は本が好きで、毎日読んでいたんですが、それが気持ち悪いと言ってきて」 「いじめはどんどんエスカレートしていって、生きるか死ぬかと言うところまで来て…」 「ある時僕がそいつにやり返したんです。 そいつは階段から僕を突き落とそうとして来たんで、やり返してやったんです。そしたらその反動で、そいつは死んでしまいました」 「警察は僕を捕まえませんでした。正当防衛だって。でも、それを逆恨みしたそいつの親が、ある日僕に刃物で襲いかかってきて、そのまま…」 「そうか…」 男はしばらく黙っていたあとに話し始めた。 「私はな、生前ひどい酒飲みだったんだよ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加