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「毎日酒を飲んでは妻と子供に暴力をふるいつづけた。子供はそのせいで精神を病んでしまった」
「ある日私が仕事から帰ると、子供は首をつって死んでいた。ちょうど君くらいの年だった」
「それから私の妻への暴力はますますひどいものになった。子供にたいして何もできなかった、自分へのやるせなさもあったのかもしれない」
「そしてある日、妻を包丁で殺してしまったんだ。あの日の手の感触は、まだ覚えている」
「警察は当然私を逮捕した。私は牢獄に繋がれることになったが、比較的刑は軽かった。人を殺した割にはね」
「しかし、私はその時すでに、酒の飲みすぎて末期癌だったんだ」
「刑務所ではろくな治療も受けられず、そのまま野垂れ死んだと言うわけさ」
「そうですか…」
少年は力なく笑った。「お互い、ろくな人間じゃないですね」
「こんなところに来てしまったのも、その罰ということでしょうか…」
その時、家の扉を叩く音がした。
「もしもし、誰かいますか」
「はーい」少年が玄関に向かった。
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