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「た、まきくん、もしかしてキミ、高嶺常務に……」
その気まずさの矛先を天莉に向け、まさか恋人へ告げ口をしたのか?と問おうとでもしたのだろうか。
どう責めるべきか逡巡した様子で言い淀んだ課長へ、「玉木さんからは何も上がってきていませんよ? ひょっとしてわたくしが高嶺常務へ報告したことに、何かまずいことでもございましたでしょうか?」と直樹が割って入る。
「あ、いえ、別にまずいことなど――」
直樹の助け舟に課長が慌てて口をつぐんで。
「――おや? やけに汗をかいておられますね。もしかして部屋の換気がよくありませんでしたかな?」
変な汗をかきながらギュッと身体を縮こまらせた課長に、尽が追い打ちをかけるようにそんな声を掛けるから。
課長は「だっ、大丈夫です! とても快適であります!」と下級兵のように答えながらますます小さく萎んでしまう。
天莉は課長のそんな姿を見て、少しだけ溜飲が下がった気がして。
震える手で、猫の婚姻届では空きのままなはずの『証人欄』に、〝風見斗利彦〟という課長の名前などが埋められていくのを存外穏やかな気持ちで見守ることが出来た。
だって、きっといま目の前で書かれている小豆色の書類は、課長に圧を掛けるためだけに用意された偽物に違いないと確信できたから。
課長が使っている、会社から支給されている安いボールペンを見詰めながら、(本当に信頼している相手になら、高嶺常務はご自分のペンをそのまま手渡したはずだもん)とさえ思ってしまった。
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スター特典「『崖コク』名付け裏話」
https://estar.jp/extra_novels/26096432
を追加しています。
タイトルのまんまの内容です。もし宜しければ。
(※)小説ではありません。
☆777のお礼でもっと早い段階で作成していたスタ特ですが、斗利彦を加えたのでご案内リンクをこちらへ移しました。
☆2で公開なのはスタ特の並びの順番を後方に回すためで深い意味はありません💦
![70fbdd1e-ffaa-4e6d-9e62-1f5ff107df8b](https://img.estar.jp/public/user_upload/70fbdd1e-ffaa-4e6d-9e62-1f5ff107df8b.jpg?width=800&format=jpg)
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