(12)初めまして。常務取締役をしております高嶺尽と申します

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 天莉(あまり)が美味しいと思って味見したもの、天莉が食べたいと思って食材を用意して作ったものを、(じん)も喜んで食べてくれる。  最初のうちこそ庶民的なものはどうかな?と思っていた天莉だったけれど、今ではそう言うのも全然気負わなくなった。  アジの開きの干物を焼こうが、小口ネギたっぷりの納豆を練ろうが、キュウリの浅漬けを添えて出そうが、里芋の煮っ転がしを小皿に取り分けようが、尽は綺麗に平らげて、「ご馳走様、美味しかったよ」と言ってくれる。  特に気に入ったものは「これ、美味(うま)かった。また作ってくれる?」と付け加えてくれるので、尽の好みが段々把握出来てきて――。  そんな中、残したりケチをつけたりする事こそないものの、噛まずに丸呑みしているところから、どうやらピーマンが苦手なのかも?と言うことも見えてきた。 (入れないでって言わないところが何だか可愛く見えちゃう!なんて言ったら、怒らせちゃうかな?)  別に大したことではないけれど、そう言う一つ一つがやけに嬉しかったりする天莉だ。 (そう、私が食べるのを作るついででも大丈夫だから、気楽なんだもんっ)  もっともらしい理由を付けてはみたけれど、要はこの生活が身体に馴染みつつあるのだと、天莉自身心の片隅では分かっている。  そんな折のことだった。
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