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天莉が美味しいと思って味見したもの、天莉が食べたいと思って食材を用意して作ったものを、尽も喜んで食べてくれる。
最初のうちこそ庶民的なものはどうかな?と思っていた天莉だったけれど、今ではそう言うのも全然気負わなくなった。
アジの開きの干物を焼こうが、小口ネギたっぷりの納豆を練ろうが、キュウリの浅漬けを添えて出そうが、里芋の煮っ転がしを小皿に取り分けようが、尽は綺麗に平らげて、「ご馳走様、美味しかったよ」と言ってくれる。
特に気に入ったものは「これ、美味かった。また作ってくれる?」と付け加えてくれるので、尽の好みが段々把握出来てきて――。
そんな中、残したりケチをつけたりする事こそないものの、噛まずに丸呑みしているところから、どうやらピーマンが苦手なのかも?と言うことも見えてきた。
(入れないでって言わないところが何だか可愛く見えちゃう!なんて言ったら、怒らせちゃうかな?)
別に大したことではないけれど、そう言う一つ一つがやけに嬉しかったりする天莉だ。
(そう、あくまでも私が食べるのを作るついででも大丈夫だから、気楽なんだもんっ)
もっともらしい理由を付けてはみたけれど、要はこの生活が身体に馴染みつつあるのだと、天莉自身心の片隅では分かっている。
そんな折のことだった。
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