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「たっ、高嶺常務が笑えない冗談をおっしゃるからですっ!」
思わずそんな尽を睨み付けてそう返した天莉だったのだけれど。
「冗談とは心外だな、天莉。俺は結構本気で言ってるんだけどね?」
今までは息子の自主性に任せてくれていた両親から、三十四歳になったら自分たちが勧める相手との見合いを否応なく受けてもらうと宣言されているのだと、尽が真剣な顔で吐息を落として。
「そうなる前に、俺は天莉を両親に紹介したいんだよ」
そう言った。
「――それに、どうも天莉は勘違いしているみたいだけど……キミのご両親に対しても、俺は元より〝お嬢さんとお付き合いさせて頂いています〟だなんてまどろっこしい挨拶をするつもりはないんだけどね?」
「えっ?」
「結婚の許しを得るために挨拶へ行くのに、何でわざわざ交際宣言をする必要がある? そんなところはすっ飛ばして、『お嬢さんを私にください』一択だろう?」
眼鏡越し。
真摯な表情で見つめられた天莉は、尽はこのとんでもない申し出を、本気で言っているんだと理解した。
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